演奏家のことば。

わたしたちの作品をつくる上で欠かせない「音」。
ここでは、演奏を担当してくださった音楽家の皆さんに、
曲の魅力や、作品への印象をお聞きしています。

演奏家インタビュー Vol.2

音が描く色、絵が響かせる音──
ピアニストが見つけた、想像力の交差点

Introduction

語るように響くファゴット、
風のように駆け抜けるピアノ。
甘美さと疾走感、そして霧の中の静寂──
Récit et Allegro》という
一曲の中に詰め込まれた色彩を、
ピアニスト・玉川明日香さんは
深く味わいながら演奏していると言います。
『光芒』のイラストに触れたときに感じた、
音と絵のリンク。
そして、「そうそう、この感じ!」と
頷きたくなるほどぴたりと重なるイメージ。
音楽と視覚表現の融合が、
聴き手や演奏者自身にも
新たな気づきをもたらす──
そんな表現の可能性について、
語っていただきました。

Q1. その曲についてどう思いますか?
暖かくまろやかな音色のファゴットが
語るように魅せる「レシ」の部分。
そして、風が吹き抜けるようなピアノ伴奏と共に
奏でられる疾走感溢れる「アレグロ」の部分。
アレグロがそのまま続くかと思いきや、
中盤では霧の中を探るような、
抽象的な和声進行とともに紡がれるメロディは、
神秘的な静けさを感じさせます。
最後にはピアノとファゴットがお互いの休符を
埋めるように激しく音を掛け合い、
華やかに駆け上がりながら最後をしめくくるため、
演奏していると一体感と高揚感が
いつも全身をかけめぐります。
Q2. 作品の見せ場はどこですか?
どの場面も、それぞれの見せ場があると感じますが、
中盤のゆったりとファゴットが
奏でるところはかなりイチオシです。
まず和声(主にピアノが奏でているハーモニー)
がとにかくオシャレで、フランスの風を感じますね。
それからファゴットの奏でる音がとても
柔らかく滑らかで色気があって…。
ここまでファゴットが前面に出てくることって、
普段のアンサンブルではあまり見ないので、
ソロで聴くとこんなにも暖かみがある素敵な
音色なのか!と、うっとりしてしまいます。
Q3. 絵を実際に見てどう思いましたか?
とても素敵です!!
イラストを見ながら曲を聴いていると、
まるで1本のドラマを見たような気持ちになりました。
迷いながらも、その向こうにある光に向かって
進んでいくというストーリーが、
私が曲に対して感じていた色彩や疾走感、
エネルギーにピッタリと当てはまりました。
また、「確かにここの音は
そんなイメージが持てるなぁ」と、
自分の中でも新たな曲の解釈に繋がる
発見があったりもしました。
LEONさんの豊かな想像力と、
それを絵に落とし込めてしまう技量と
脚本力には本当に感服します。
絵と音楽という、ツールの違うアートが融合することで、お互いが良い影響を与え合い、
音楽の聴き方や絵の見方により
深みが増すような気がします。
Q4. クラシック音楽を絵にすることについて
どう思いますか?
私は曲を聴くと、その曲の温度感や色彩、
情景がぼんやりと浮かぶことが多いので、
それを絵として目に見える形でお客様に
ご紹介できるのはとても嬉しいです。
絵のプロとして活躍しているLEONさんに
自分の中のイメージをお伝えして
絵を描いていただくと、
いつも、「そうそう、この感じ!」と、
びっくりするほどイメージ通りのイラストを
描いていただけて幸せです。
今日、ドラマや映画、アニメなどの映像作品と
音楽は当たり前のように結びついており、
あまりにも身近で自然すぎて、
その関連性に目を向けきれていない人も
いるのではないでしょうか?
この取り組みが、無意識レベルで感受している
音楽の効果に気づくきっかけと
なるのではないかと思います。
そう考えると、クラシックという一見すると
敷居の高いジャンルですが、
演奏者のもつイメージをイラストという
形で提供することで、
ドラマを見ているように親しみが持てると共に、
クラシックが人の営みの延長線上にあり、
そこまでハードルの高いものではないということを
感じていただけるのではないかと思います。
また、これはあくまでひとつの解釈なので、
イラストを見たことをきっかけに、
お客様一人ひとりが
「じゃあ自分は曲を聴いてどう感じる?」と、曲と、
そして自分と対話する時間を
ぜひつくっていただきたいと思います。
そうすることで、音楽の良さと共に、
自分自身の感性に気づく
きっかけにもなるのかなと思います。

プロフィール │ PROFILE

玉川 明日香(たまがわ あすか)|ピアノ|関西Asuka Tamagawa|Piano|Kansai, Japan

2歳よりピアノを始め、ヴァイオリン、
合唱、声楽と音楽を幅広く学ぶ。
滋賀県立石山高等学校音楽科、
滋賀大学教育学部音楽専攻、
同大学院を卒業。
第21回「長江杯」国際音楽コンクール
ピアノ部門 高校の部
第1位および審査委員長賞受賞
(入賞者披露演奏会出演)。
第28回 日本クラシック音楽コンクール 全国大会入選。
第22回「万里の長城杯」国際音楽コンクール
ピアノ部門 大学の部 第2位受賞。
現在は滋賀県内の県立高等学校にて
音楽科専任教諭を務める。
これまでにピアノを市原幸子、
松田みゆき、福井尚子、
多川響子、犬伏純子の各氏に師事。